お見合い婚にも初夜は必要ですか?【コミック追加エピソード】
毛布をソファに運んで寝かせてあげよう。でもコートとスーツの上着くらいは脱がせなきゃね。近づいてコートの前を開ける。ネクタイはとっくに緩んでいるので、しゅるしゅるとはずし、ジャケットの前をくつろげた。
ひゅ、と息が止まった。
白いワイシャツについている赤い汚れ。
これって口紅?
どくんどくんと心臓が鳴り響き出す。いや、インクか何かじゃない? 指で触れようとして、その汚れがインクのように滲んでいないことに気づく。それに唇の縦皺みたいな痕も。
これらの証拠を補強するように、その染みの少し上に肌色の薄い汚れを確認した。たぶんファンデーションだ。
ワイシャツにべったりくっつくくらい近くに女の子がいたってこと?
浮気ではない。それはわかる。部下の人たちと飲んでいたのは間違いないだろう。
日向さんは育休中だけど、女性の同僚は他にいる。でも、今の女性の同僚はみんな既婚者だったはず。

「女の子のいるお店にいったのかな」

この時間帯だ。飲み会はおそらく二次会か三次会まで続いたのだろう。その会場が、キャバクラやホステスのいるクラブだった可能性はある。
そういうお店に行くんだ。
単純にショックだった。
付き合いで行くことくらいあるに違いない。だけど、そんなに女の子をべったりと近くに近づけて飲んでいたの? 私以外の女の子と身体を寄せ合って、笑い合っていたの?

私は唇を噛みしめ、それでも高晴さんからコートとジャケットをはぎ取った。そして布団をばさばさとかけてリビングの電気を消した。
寝てしまおう。今日はもう何も考えまい。
楽しかったゲームの新シナリオも、高晴さんの頑張りを誇らしく思う気持ちも、どこかへ吹っ飛んでしまっていた。


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