木苺 ~甘酸っぱいもの~
その夜、

「ゆき、俺と別れてほしい」

真面目な顔をして、篠田(しのだ)は言った。

「カミさんに子どもが出来たんだよ。
それに浮気も勘づいてる…」

「篠田さん、あたしも妊娠しているの…」

本当は生理が少し遅れているだけだったが、別れたくなくて思わずついた嘘だった。

「あ~、マジ…?
おろしてくれない?
お金なら渡すから」

少し鬱陶しそうに言うその人は、舞雪が恋した人だった…。

その瞬間、不思議な事に恋した気持ちはどこかへ消えた…。

「てかよくガサツな奥さんと出来るね!
キモくない…?
夫婦仲が悪いと言っておきながら、ヤル事ヤッてんじゃん!」

「…ゆき、それ以上言ったら殺すよ」

篠田の言葉に、舞雪はラブホテルの部屋を飛び出した‐。
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