秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 玄関を開けると、床も壁も明るいウッド調の温かい雰囲気の空間が広がっていた。

「すごい……」

 都会にいるというのに、まるで自然に囲まれているような気分になる。
 広々としたリビングは陽太とふたりで住んでいたアパートとは比べものにならないほど広く、配置されている家具類は木で作られたナチュラルなものが多い。

「素敵」

 感嘆のため息を漏らす。本当はもっといろいろと伝えたいのに、一目で気に入ったこの部屋に胸がいっぱいになり、簡素な単語しか出てこなくなる。

「よかった。こだわって探した甲斐があるよ」

「探した、甲斐って……?」

 まさかなあ……と、恐々と尋ねる。

「自然を感じられるものが身近にあった方が、千香も陽太も落ち着くかなって思ってね。先入観かもしれないけど、子育てにもよさそうだし」

「私たちの、ために?」

「もちろん。少し前に千香の居場所を掴んでいたし、陽太の存在もわかってた。でも、迎えに行くのはいろいろと用意が整ってからだって我慢してたんだ」

 つまりこの部屋は、三人での暮らしを考えて用意したらしい。まさかと思ったが、予感が的中して唖然とする。

 ご両親への説明に、チャイルドシートの用意。さらにマンションの購入という、規模の大きな準備にもはやなんと言ってよいのかわからなくなる。

 世間話のような気軽さで話す大雅に、驚きすぎて絶句した。彼の執着の一端を垣間見た気がして、やはりここは深く追求しない方がいいだろうという結論に至る。

 これで本当に私が結婚を承諾しなかったら、彼は一体どうするつもりだったのだろうかという疑問も、きっと言葉にしない方がいいのだろう。

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