秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 翌日の午後になって、三人で大雅のご両親を尋ねた。
 その道中、彼の実家について話してもらううちに、本当に私が嫁いでいいのかと不安に陥ることになる。

 彼のご両親が私を受け入れてくれていると聞いて安堵して、すっかり詳細を聞き忘れていた自分のうかつさに、今さらながら後悔する。

 祖母の指示によってさまざまな教養を身につてきたし、親類の会社で社会人経験もした。
 ただ、よく考えてみれば、その大半が親類やそれなりに見知った人に囲まれた生活だった。会社は縁故採用が多くて昔から知っている人がいたし、師事していた講師も祖母の知り合いばかりだ。
 そのせいか他人に対して明らかに私は警戒心が低く、すぐに人を信用してしまう危うさがあるようだ。

「あなたの実家が、あの小田切建設だなんて聞いてないだけど……」

 大雅の実家は国内大手の小田切建設でを営んでおり、お義父さんはその社長を務めていると聞いて目をむく。そんな重大事項は、もっと早く教えてほしかった。

「でも、普通のおじさんだよ」

 それは家族だから言えるのであって、私にとっては違う。そんな家庭に、実家と縁を切ったような私が嫁いでいいのだろうかと不安になる。
 そう悩んだところですでに婚姻届は受理されており、今さらどうしようもない。
 大雅に絆されて籍を入れる前に、きちんと顔を合わせて直接許しを得ておくべきだったと、思わずため息が出る。

「親が社長だって知ってたら、千香は俺との結婚を足踏みしたんじゃない?」

「それは……」

 子どもができていなければ、躊躇するどころかもしかして逃げ出していたかもしれない。
 大雅が親とは無関係の仕事をしているとはいえ、彼が大企業の御曹司とわかっていたら気安く話をするのでさえ戸惑っていただろう。

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