秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「そもそも、俺は自分の希望を押し通して弁護士になったんだ。それは親も認めてくれた。弟が会社を継ぐのもずっと前から決まっている。もちろん、弟も納得したうえでね。だから、いきなり大企業の社長夫人とかになるわけじゃないから、そんなにかまえないでよ。それとも千香は、社長夫人になりたかった?」

 いたずらな視線を向けられて、慌てて全力で首を横に振る。

「よかった」

 私の緊張を解そうとしたのだろう。安堵しているというより、若干からかい交じりだ。

「親との関係は本当に良好だから、そこは心配しないでね」

 そんな話をしながら向かった先は明らかに高級住宅街で、再び嫌な緊張に包まれる。
 
 ついに目的地に到着して、目の前の立派な邸宅を呆然と見つめた。
 おじいさんの代に建てられたという大雅の実家は立派な洋館で、その外観はさながら博物館のようだ。

 建築には詳しくないが、文化財の指定を受けていると言われたらそのまま納得してしまいそうなほど素敵な建築様式で、ここに人が住んでいるとはにわかに信じがたくなる。

 広い庭は一面芝に覆われ、花壇にはビオラをはじめとしたこの季節の花がたくさん咲いている。

「まあまあ、よく来てくれたわね」

 出迎えてくれたのはお義母さんのようで、目元が大雅によく似た優しそうな女性だった。
 そのにこやかな表情に、どうやら彼の話の通り歓迎されているようだと、強張っていた体からわずかに力が抜ける。

「突然の訪問になってしまい、すみません」

 頭を下げる私に、「気にしないで。あなたが来てくれるのを、今か今かと待っていたのよ」と気さくな様子で返してくれた。

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