秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「陽太。今夜は久しぶりにママとふたりだね」

 少し前まではそれが当たり前だったというのに、大雅と再会してからというものすっかり三人でいるのが自然になっていた。
 住み慣れてきた室内が、いつも以上に広くもの寂しく感じる。

「ぱぁぱ、ないない」

「うん、そうだね。パパはお泊りになるんだって」

 ここ最近の陽太は〝パパ〟という言葉を覚え、それが大雅を指すと理解しているようだ。
 発語はゆっくりだった彼が、比較的早く〝パパ〟と言うようになったのは、大雅がたくさん声をかけ、目いっぱいの愛情を注いでくれているからだろうと思っている。


 昼を過ぎた頃。遊び疲れて眠ってしまった大雅の頭をひとなですると、ソファーに移動してなにげなくテレビをつけた。内容はまったく頭に入ってこないが、ただ眺めているだけでも多少は気が紛れそうだ。

 大雅の不在は、想像以上に私を不安にさせるようだ。朝からなにをしていても上の空になりがちで、集中できない。
 仕事をしようとパソコンを立ち上げたものの、一文字も進まないまま閉じてしまった。

『――広島県には初出店ですね。地元の方もオープンを楽しみにしているようです』

〝広島県〟と耳にして、ハッとする。
 いつまで経ってもつい反応してしまう自分に、苦々しくなる。

 もちろん、未練などなにもない。未だに実家がなにも言ってこないのが、ふと気になっただけだ。
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