秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 コーヒーを淹れて、ソファーに戻る。ミルクも砂糖も多めに入れたそれをひと口飲むと、程よいぬくもりと甘さに強張っていた体から力が抜ける。

 ほかになにか気を紛らせるものはないかとリビングを見渡せば、リビングの一角に飾られた家族の写真が目に入った。

 大雅は、陽太の写真を頻繁に撮りたがる。それはまるで、会えなかった日々を取り戻そうとしているようにも見える。それをこうして飾ったり、両親に送ったりしている。

 三人が一緒に写った写真を見ているうちに、なにをうろたえているのかと冷静さを取り戻せた。

 大丈夫。今回の出張と梨香とは、なにも関係ない。〝広島県〟と聞いて、動揺しただけだ。

 大雅は、明日になったらきっとたくさんのお土産を手に帰ってくるだろう。『出張なんてもう行きたくない』ぐらいの愚痴もこぼすかもしれない。
 その様子を想像して、くすりと笑いをこぼした。


 夜になって陽太が寝てしまうと、途端に手持ち無沙汰になる。こういうときに無意識にスマホを手にしてしまうのは悪い癖だ。

 陽太の写真でも送ろうかと考えながら画面を操作したところ、真っ先に目に飛び込んできたのは、昼間に見ていた梨香のSNSだった。ページを閉じずにいたことを、若干後悔する。
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