秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「はあ」

 思わず重いため息がもれる。
 そのままなにも見ないで閉じておけばいいのに、どうにも気になって閉じられないでいる。

 あれからまた更新されているようだと、よせばいいのに目を向けてしまった。

「なに、これ」

 男性の腕を掴む梨香と思われる腕の移り込んだ写真を目にして、一気に緊張感が高まる。
 一体これはどういう状況なのか、いまいち掴めない。

 ただ、嫌な予感がする。目を閉じて、大雅は今朝なに色のスーツを着ていたのか思い起こす。
 たしか、青系だったはず。じっくり見れば気づくような細かなストライプが入っており、それは先日私が選んだものだ。

 再び、梨香が投稿した写真に視線を戻す。
 写り込んでいたコートからはみ出したジャケットは、まさしく今思い浮かべたのと同系色のものだ。震える指で拡大してみれば、見覚えのある細いストライプも確認できる。

「たい、が?」

 まさかとは思うが、あまりにも酷似したスーツを見て動揺する。
 ただ、腕以外にはなにも写っておらず、それだけでは断定できない。

 これがまったく知らない人がアップした写真なら、なにもここまでに気にしなかっただろ。単に似たようなスーツを着た人だと、流し見るだけだ。

 けれど、双子の姉が関わっているとなれば話は別だ。

 まさか、大雅は出張だと嘘をついて、こっそり梨香と会っているとか?

 ううん。彼はそんな人じゃない。私にも陽太にも、あれほど『愛してる』と伝えてくれる大雅が、簡単に裏切るわけがない。

 そうすぐさま否定するが、どうしても悪い方へ引きずられそうになる。
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