秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 翌日、目を覚ました陽太を着がえさせると、彼の写真を添えて大雅にメールを送った。

 大雅から直接聞くまでは、こちらから彼に問い詰めはしない。昨夜、眠れずに悶々と考える中でそれだけは決めていた。だから、余計な言葉は一言も入れていない。
 なんとか明るい文面になるように努めて、いつも通りを装った。

「陽太、今日はパパが帰ってくるよ」

 ご飯を食べているうちに飽きてしまったようで、手にしたスプーンで食器を叩く陽太窘めながら声をかける。
 私が上の空のせいか、陽太もなかなか集中できないでいるようだ。

「早く帰ってくるといいね」

 午前中には向こうを発つと聞いているが、彼の帰宅は早くても昼は過ぎるだろう。

 会いたいのに、会うのが怖い。
 なにをしていてもますます手につかず、陽太には申し訳ないが今だけはテレビの力を借りようと、彼のお気に入りのアニメを流しておく。

 その背後のソファーに膝を抱えるようにして座って、顔をうつむけた。

 どんな言い方で聞いたらいいのか。なにから話せばいいのか。
 じっと考え込んでいると、スマホの着信音が鳴った。
 ビクリと体を揺らして、慌てて手に取る。

『千香、今ホテルを出たところだけど、お土産は……おい、俺に触るな』

「大雅?」

 彼にしては珍しく怒りの滲む声に、なにがあったのかと不安になる。
 近くに誰かがいるのだろうか。

『悪い、千香』

 焦った声音に、大雅の身が心配になる。
 状況が読めず、ひたすら受話器の向こうの気配に耳をすませた。
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