秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「私、家族に愛してもらえなかったんです」

 自分で言っておきながら、いかにも同情を誘うような言葉になってしまった。チラリと隣を見れば、大雅が心配そうな顔をしてこちらを見ている。

「双子の姉がいるんですけど、お嬢様育ちの母にとって初めての育児がいきなりふたりもだなんて、とても育てられなくて……」

 再び視線を窓の外に移す。
 できるだけ感情を込めず、周りから聞かされてきた事実を努めて淡々と語る。

「泣き出すのはいつも私が先で、母は私が鬱陶しくなったんでしょうね。かわいがるのは姉ばかりになって、私は放置されることが多かったようです。それに気づいた父方の祖母が、私を引き取って育ててくれました。と言っても家は敷地内同居で、遠く離れて暮らしていたわけじゃないんですけどね」

 でもその近すぎる距離に、私はずっと苦しめられてきた。

 今にして思えば、あの母親に生まれたばかりの双子を見分けられたのかは甚だ疑問だ。たとえ衣服で区別がつくようにされていても、あの人はそんな細かなことを気にかけるような人じゃない。

 今さらそこを考えても無駄かと小さくため息をつき、さらにひと口アルコールを含みながら続けた。

「祖母はいつだって厳しくて、なんでも買ってもらえる姉を羨ましがれば、我慢をするように言われてばかりでした。大人になってその教育方針は理解できたけど、当時はずいぶん辛かったなあ」

 子どもの頃の私は祖母の意図などわかるはずもなく、姉との扱いの差にたびたび涙を流していた。
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