秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「私が大雅さんと結婚したばかりに……ごめんなさい」

「千香」

 涙で声が震える。
 そんな私の肩を、隣からすかさず大雅が抱き寄せてくれる。

「俺は、千香意外と結婚するつもりはなかった。だから、そんなふうに思わないで」

 ご両親の前でもそう堂々と言ってくれる大雅に、ますます涙があふれてしまう。

「ねえ、千香さん。大雅からも、あなたはひとりでずっと理不尽な扱いに耐えてきたって聞いてるわ」

 お義母さんが気遣うように話しかけてくる。

「そんな環境でも、まっすぐに芯の強い女性に成長したあなたを、私は尊敬しているのよ。女手ひとつで陽太君を立派に育ててきたあなただから、信頼できると確信したし、家族になれると嬉しく思ったのよ」

「おかあ、さん……」

 私を認めてくれるふたりに感謝の気持ちを伝えたいのに、涙で声にならない。

「ほら、いつも言ってるでしょ? 私たちにどんどん頼っていいのよって」

 それは会いに来るたびにかけてもらう言葉だ。

「陽太君まで広島に連れていくのは、ちょっと大変そうねぇ。うちに、ひとりでお泊りさせるのは心配かしら?」

 しんみりとした話はここまでというように、お義母さんの口調が明るく変わる。

「んー、意外と平気……かもな。千香の代わりに俺ひとりで寝かしつけても大丈夫だったし」

 夜泣きもほとんどなくなったし、相変わらず人見知りもほとんどない。
 陽太と長く離れたことがない私が心配しすぎてしまうだけで、案外本人はへっちゃらかもしれない。

「じゃあ、それまでの間に、練習しておきましょうか」

 今後の動きを確認し合って、あとは実家との日程を調整するところまで決めると、この日は解散となった。
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