秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「家族旅行も私は数に入れてもらえず。というより知らされてもいなくて、静かすぎる母屋が不思議で祖母に尋ねたら、旅行へ行ったと教えられるありさまで……。そんな関係なのに、将来は私が婿を取って家を継ぐように言われ続けてきました。父が県議をしているので、その地盤を継がせるためになんですけどね」

「ひどいな」

 隣から聞こえたつぶやき声に、まったくだとうなずく。
 時間がかかったとはいえ、結婚させられて手遅れになる前に抜け出せたのは本当によかったと改めて思う。

「つい先日、祖母が亡くなったんです。葬儀を終えて今後の話になったとき、妹の私が家と土地をもらうのはずるい。自分が後を継ぐと、突然姉が言い出したんです。母も、そうすればずっと姉と一緒にいられると同調しました。ふたりにどこまでも甘い父までも迷いはじめてしまって……。もうどうでもいいやって、張り詰めていた糸が切れちゃいました」

 惨めに思われたくなくて、最後はどこか陽気な口調で締めくくり、笑みも浮かべてみせた。でも、きっとうまく笑えていないだろうと自覚している。

「勤めていた会社も手紙ひとつで退職しちゃったし、すべてを放り出して東京へ逃げて来たんです。いい歳をした大人が、無責任すぎますよね」

 自嘲するように笑って見せると、大雅は静かに首を横に振った。

「そんなことない」

「ありますって」

 誰がどう見ても、私の取った行動は非常識で大人げない。
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