秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「大雅さん。やっと会えたわ」

「約束はしていませんが。そもそも、あなたは私に二度と近付かないように命令が出ているはずです」

 冷たく言い放たれても、梨香の表情はにこやかなままだ。大雅に想いを寄せているはずなのに、自身にとって都合の悪い話などまったく聞こえていないようだ。

「今日はどこへ連れて行ってくれるの?」

 だめだ。言葉がまったく通じていない。 

「私に関わらないでもらえますか」

「ねえ、いつになったらあたしと結婚してくれるの?」

 伸ばしてきた腕を、大雅がさっと払って私ともども後ろに距離を取る、

「ひどいわ」

 わずかに傷付いた顔を見せた梨香だったが、立ち去る様子はない。

「自分がなにをしているのか、おわかりですか?」

「当然よ。あたしたち、もうすぐ結婚するのよ」

「あり得ない」

 大雅が吐き捨てるように言う。
 私たちに気づいたのか、足を止める人がちらほら出はじめている。
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