秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「そんなことないわ。だってパパもママも、あたしがほしいって言ったものはなんでもくれるもの。大雅さんだって……ねえ」

 首を傾げてみせた梨香にぞっとする。

「私はもう既婚者ですので。そうでなくても、あなたと結婚する気は微塵もありません」

 眉間にしわを寄せた梨香が、ここにきてやっと私に目を向けた。

「あら、千香のせいかしら? 千香はいっつもあたしの邪魔ばかりする」

 心当たりのない話に、眉間にしわを寄せる。

 梨香が両親に愛されて自由に過ごしているすぐ近くで、私はないものねだりをする日々を過ごしてきた。
 同じ玩具がほしい、一緒にいてほしい、頭をなでてほしい。そのどれも与えられるのは梨香ばかりで、私はなにひとつ手にできなかった。邪魔どころか、関わることすらさせてもらえなかった。

 私を捕まえようと伸ばされた梨香の腕を、大雅が掴む。

「千香がいなければいいのよ!」

 よほど私が憎いのか、目を吊り上げて喚きはじめた。
 騒ぎを聞きつけて、周りにさらに人が集まりつつある。

「なんで姉のあたしじゃないのよ。千香なんて、真面目でつまんない子じゃないの」

 もうなにを言っても、今の梨香には届かなそうだ。大雅は声をかけるのをやめて、抑え込むのに専念している。
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