秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「警告はしたんだけどね」

 宿泊先のホテルに着くと、ため息をつきながら大雅が言う。

「接近禁止命令が出されている中でのつきまといだ。二年以下の懲役か二百万円以下の罰金が科せられることになる。どちらにしろ、大勢の前での出来事だから、父親もろとも無傷ではいられないだろうな」

 あれほど身勝手な人たち相手でも、もしかしたら正義感の強い大雅は救ってやりたかったのかもしれない。そう思うと、なんだかやりきれない。


 しばらくして落ち着きを取り戻した梨香は、それでもどう受け止めればいいのかよくわからない主張をしたと後日聞かされた。

『――あたしがほしいものは、パパとママがいつだってくれたの。だから大雅さんだってもらえるはずだわ』

 ある意味彼女も、両親によって優しい虐待を受けたと言えるのかもしれない。
 ここまで表面化した問題は初めてだったが、梨香の周囲からはその後次々と不満が噴出したらしい。

 勝手に彼女面して顔見知り程度の男性に付き纏ったり、もう手に入らない限定品を持っている知人に当たり前のように「ちょうだい」と強請るなど、常識を疑う行動が多発していたようだ。

 それでも徹底的に拒否していれば、すぐに彼女の興味の対象が移り変わったため、仲間内のいざこざ程度で済まされてきた。

 自分が婿を取って後を継ぐと私の前で宣言していたが、父が紹介した人物はまったく自分の好みとあてはまらなかった。
 梨香にとっては内面より見た目が重要で、いくら仕事ができようがそんなものに価値を見出していなかった。

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