秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 母と一緒になって相手の批判をしているうちに、婿の候補に含まれていた父の腹心の部下のひとりが去っていった。
 候補の中には地元の有力者のご子息も含まれており、こちらも同じようになにかと難癖をつけて顰蹙を買っていた。

 母と梨香のわがままで、佐々木家の評判は散々なものになっていく。

 そんなことの繰り返しで、父も参ってしまっていたのだろう。
 祖母に続いて信頼のおける部下が去り、求心力をどんどんと失っていく現状に焦りもあったのかもしれない。

 そこで現れたのが、弁護士をしている大雅だった。
 その容姿はもちろんのこと、職業も申し分ない。少し話しただけで、誠実さも有能さも伝わったに違いない。
 おまけに娘の知り合いだとなれば、佐々木家に取り込むのも不可能ではないと踏んだ。

 偶然顔を合わせた梨香は、大雅のような優れた人物が家を飛び出した妹の知人だということに嫉妬心を抱いたようだ。そのせいで、余計に大雅に執着するようになる。

 拒否されるほど、手に入らないもどかしさに癇癪もひどくなり、ストーカー行為をするに至る。さらに、母親が梨香の言動を正すどころか加担していたせいで、梨香は自分の言動のおかしさに気づけてもいなかった。

 大雅がもし私と無関係の人間だったら、梨香もここまでの執着を見せなかったかもしれない。それまでと同じように、しばらくしたら飽きてほかに目移りしていた可能性もある。

 でも、やはりそんなこととは関係なく、佐々木家の人間の言動はおかしかったのだ。

 公衆の面前で起きた騒ぎを到底隠し通せるはずもなく、梨香の起こした騒動は地元の有力紙に記事として掲載された。父はおそらく、次の選挙での当選は難しくなるだろう。もしくは、立候補を断念するかもしれない。
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