秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「私の周りには、そんなふうに認めて甘えさせてくれる人なんていなかったから、大雅に話してなんだかほっとした」

 大雅がくれた言葉に心がすっと軽くなり、彼の名前が自然と口を突いて出た。

 私の味方をしてくれる大雅に、無防備すぎるとわかっていてもどんどん気を許してしまう。

 それからしばらく、とりとめもない話が続く。
 聞き上手で話し上手な大雅につられて、私もいつになく饒舌になる。なかでも、互いの仕事の失敗談では異様に盛り上がった。

 しまいに私は、「これから仕事を見つけて、自力で生きていく!」と声高に宣言までしていた。

 彼と話している時間が楽しくて、お互いお酒がどんどん進む。

 大雅と最初から気が合い、隣にいるのが少しも苦ではなくなっていく。気安い口調に、もうずいぶん前から見知った仲だと錯覚しそうだ。

「私、久しぶりにこんなに笑ったかも」

「奇遇だね。俺もだよ」

 視線を合わせて、同時に噴き出した。

「ずっとさ、仕事一筋でやってきたんだよ。負け知らずなんて言われるぐらいにはなれたんだ。けど、正義の味方になりたくて弁護士になったはずなのに、場合によって加害者をかばう立場になるときもある。それがちょっとしんどくってさ」

 この人は、かなり正義感の強い人なのかもしれない。
 酔いで気が大きくなっていた私は、彼の肩に腕を回して慰めるようにぽんぽんと叩いた。驚いた顔をした大雅だったが、それも一瞬で「ありがとう」と笑みを返してくる。

「千香と一緒にいると、いい意味で気が緩むな。つい、弱音をはいてしまう」

 頼ってもらえたみたいで光栄だと、笑みを深める。
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