秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 ようやく馴染んできた頃、さらりと私の頬をひとなでした大雅がゆっくりと動き出した。

「ん……あっ……」

 引きつるような痛みに体を強張らせるたびに、心配そうに覗き込まれる。
 一夜限りの関係だというのに決して自分本位の行為ではなく、常に私を気遣ってくれるのが伝わってくる。

 大丈夫だと言葉にする代わりに、彼の首に腕を回して自ら口づける。
 それがきっかけになったのか、大雅から徐々に余裕がなくなっていく。かぶりつくように口づけられて一瞬驚いたが、それほど私を求めてくれているのだと必死に応えた。

「あ、あ……」

「千香、千香」

「大雅……」

 徐々にスピードを増す彼に翻弄されていく。

「たい、が……あぁ……」

 彼の乱れた呼吸に煽られるように、何度も名前を呼んだ。

 今この瞬間が私の生きてきた中で一番幸せな時間かもしれないと、自然とあふれた涙は彼の唇に吸い取られていった。

 私は愛されている。

 とことん甘えさせてくれる大雅に、もう判断力を失いかけた中でそう信じ込む。
 まるで本当の恋人であるかのように丁寧に扱われているうちに、私の中に彼に対する言いようのない愛しさが込み上げてくる。

「大雅」

 すぐそこまで迫っている快感の波に、未経験にもかかわらず期待感が膨らむ。

「千香、そろそろ」

 一層激しくなる行為に、しがみついていた指にぐっと力を込める。

「ああ……」

「千香……くっ」

 右も左もわからなくなるような大きな快感に呑み込まれて、爪を立てるようにして大雅の肩を掴み、体を大きく反らせた。
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