秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 でもちょっと待ってと、横道にそれた思考を無理やり止める。

「妊娠って……」

 冷静になって考えると、東京に来てから生理はあったかと疑問が湧いてくる。

「あれ?」

 そういえば、この部屋に落ち着いてから生理がきた記憶がいっさいない。
 慣れない生活になにかと忙しくしていたせいで、自身の周期をすっかり忘れていたが、今になっておかしいと気づく。

 脳内に、警告音が鳴り響いた。

「広島を飛び出してきたのが、先々月で……」

 慌てて手帳を取り出すと、慎重に日付を遡っていく。

 最後に生理があったのは、東京に来る二週間ほど前だ。つまり、それから二カ月近くきていない。

「まさか……」
 
 単なるひっかかりが現実味を帯びだして、不安に指先が震えてしまう。

「私、妊娠してるの?」

 思わず下腹部に手を当てた。
 もしそうだとしたら、相手は大雅しかいない。後にも先にも、私がそういう行為をしたのは彼だけだ。
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