秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 とりあえず落ち着こうと、ソファーに座る。そのまま目を閉じて、あの夜の詳細をゆっくりと辿っていく。
 
 大雅の泊まる部屋に連れていかれて、存分に甘えさせてもらって……いざそのときになったら、彼はたしかに避妊具を取り出していた。

『弱みに付け込むようだけど、決して軽い気持ちじゃない』なんて言いながら、都合よくそんなものを用意している大雅に思うところがあって、それは鮮明に覚えている。

 あのとき彼はたしか、『アメリカにいる悪友がまったく女性の気配がなかった俺をからかって、日本で羽を伸ばしてこいって無理やり鞄に入れたんだ』と、気まずそうに言っていたはず。
 間違いないと確信して、閉じていた瞼を開く。

 若干疑いの目を向けた私に、彼はすぐさま『もちろん、今の今まで使うつもりなんてなかった』と切実に訴えてきた。

 初対面の彼を盲目的に信じたわけではないけれど、パッケージが未開封だったのを見てとりあえず使われていないのならと受け入れた。というより、私の方が心も体ももう後戻りなんてできなくなっていた。

 あの時点で私は、優しくしてくれる彼に特別な感情を抱きはじめていて、もっと大雅に近付きたいと望んだ。

 一夜限りだと意識すると、たまらなく切なかった。でも、だからこそ大胆にもなれたし、私の知らない彼の普段の素行も深く考えないでいられた。

「絶対に避妊してくれてた。それは間違いないわ。でも……」
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