秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
再会
 ゴールデンウィーク後半の世間はお出かけモード一色の中、陽太は一歳の誕生日を迎えた。
 なにもかもが手探りだったが、無事にここまでやってこられたと安堵する。

 母親になって一年経って余裕も生まれ、陽太とともに自分も少しは成長できたとやっと思えるようになってきた。

 この子が生まれてからしばらくは、育児と仕事に追われて時間感覚だけでなく曜日感覚もなくなっていた。甘く考えていたわけではないが、子育てがこれほど大変なものだとは経験するまでわからなかった。 

 思い返してみると、夜泣きが激しい時期は、なんの前触れもなく不意に涙が滲んでくるときもあった。かわいいはずの陽太なのに、泣かれるたびに苛立ちを覚えたこともある。

 暗い気持ちになりかけていると、それを見越したように加奈子さんが訪ねて来てくれる。それだけで、心底救われた気分になった。

 軽く産後鬱になりかけていたのかもしれない。そんな時期に傍にいてくれた加奈子さんは、私の最も信頼を寄せる人になっていた。

 
 一歳の誕生日祝いは、加奈子さんと一緒に大張り切りで準備をした。
 リビングをにぎやかに飾り付けて、たくさんのプレゼントも用意した。陽太も食べられるようにと加奈子さんが焼いてくれたスポンジケーキに、私がデコレーションをする。

 ローソクにともした灯りを触りたがるのにはひやひやさせられたが、キラキラと瞳を輝かせて見つめる陽太が愛しくて、無事に生まれてきてくれたことを心の底から感謝した。


 同じ頃、父に出産の報告を入れる決意をした。
 これでもう、帰って婿を迎えるように言えなくなったはずだとどこかほっとしていたのに、【相手の男を連れて帰ってくるように】と返信があって背筋が寒くなった。
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