秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 もしここに大雅がいて父の言う通りに従ったら、一体なにをするつもりなのか。単にお祝いしてくれるだけだとは、到底思えない。

 彼になんらかの責任を負わせようとするかもしれない。それとも弁護士という職業に惹かれて、自分の後を継がせようとするとか?
 父の言葉の真意がわからず、ひたすら困惑した。

 冷静になれば、父だって梨香に議員の妻は難しいと気がつくだろう。
 自分ならやり遂げられると自惚れはしないが、それでも私は語学をはじめとする知識やマナー、茶華道など一通り身につけてきた。人前での振る舞い方も学んだし、夫を支える心づもりはできていた。

 実家での生活は息苦しいものだったが、そこで学んだ知識があったからこそ、こうして職を得られたのだと感謝している。

 ただ、その代償として家族の愛と自由な時間を得られなかったと思うと、決してありがたいだけではなかった。

 親不孝と言われようとも、実家の人間に陽太を会わせるつもりは毛頭ない。この子にまで、私のような辛い思いをさせないためになんとしても守り通す。
 今後、こちらからはいっさい連絡をしないと決めて無言を貫いた。

 陽太には過度な贅沢はさせてあげられなくても、その分愛情だけは目いっぱい注いでやりたい。
『そのうち、鬱陶しがられちゃうかも』と加奈子さんと笑いながら、自分の持てるすべてで陽太と向き合った。
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