秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「え?」
しまったと、相手を見ないままとっさに身を引こうとしたところで、一歩近付かれて扉を閉められなくなる。
「千香?」
名前を呼ばれて、ビクッと体を震わす。
聞き覚えのある声音に不審な訪問者ではないとわずかに安堵したが、そこから思い浮かんだ男性に緊張感が高まる。
確認しなければと、恐る恐る視線を上げていく。
質のよさそうなスーツに、白いシャツ。きっちりと絞められたグリーン系のネクタイに続いて視界に入ったのは、その声だけで思い描いたのと同一人物だった。
言葉をなくして固まる私とは対照的に、目の前に立つ彼は目が合った途端にわずかに目元を緩めた。
「千香、ずいぶん捜したよ」
なにを言われているのかすぐには理解できず、瞬きを繰り返しながらひたすら見つめ続けることしかできなくなる。
「まさか、俺を覚えていないのか?」
忘れるはずがない。そっくりな瞳をいつも見ているのだから、ますます忘れられなかった。
言葉が出てこない代わりに、無言のままふるふると首を横に振る。
「よかった」
私の反応に、相手の強張りが解けていくのが見て取れる。
呆然としながら、彼の名前を口にした。
「たい、が……」
私の掠れた小声に、眉尻を下げて泣きそうな笑みを見せたのは、小田切大雅その人だった。
しまったと、相手を見ないままとっさに身を引こうとしたところで、一歩近付かれて扉を閉められなくなる。
「千香?」
名前を呼ばれて、ビクッと体を震わす。
聞き覚えのある声音に不審な訪問者ではないとわずかに安堵したが、そこから思い浮かんだ男性に緊張感が高まる。
確認しなければと、恐る恐る視線を上げていく。
質のよさそうなスーツに、白いシャツ。きっちりと絞められたグリーン系のネクタイに続いて視界に入ったのは、その声だけで思い描いたのと同一人物だった。
言葉をなくして固まる私とは対照的に、目の前に立つ彼は目が合った途端にわずかに目元を緩めた。
「千香、ずいぶん捜したよ」
なにを言われているのかすぐには理解できず、瞬きを繰り返しながらひたすら見つめ続けることしかできなくなる。
「まさか、俺を覚えていないのか?」
忘れるはずがない。そっくりな瞳をいつも見ているのだから、ますます忘れられなかった。
言葉が出てこない代わりに、無言のままふるふると首を横に振る。
「よかった」
私の反応に、相手の強張りが解けていくのが見て取れる。
呆然としながら、彼の名前を口にした。
「たい、が……」
私の掠れた小声に、眉尻を下げて泣きそうな笑みを見せたのは、小田切大雅その人だった。