秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「単刀直入に聞くけど、あの子は……」

 再び陽太に向けられた視線を、私も追う。
 すっかりご機嫌になった陽太は、お気に入りの音の鳴る絵本を右手に、左手には木で作られた小さな車を握っていた。どちらも誕生日に加奈子さんがくれたものだ。

「あ、あの子は、私の子で……」

 彼になにかを指摘される前に、慌てて口を開いた。
 預かった子だとでもごまかせたはずなのに、切羽詰まって事実を明かしてしまう。
 でも、結局は行き詰って口をつぐんだ。

「父親は、俺じゃないのか?」

 正確な指摘に、ギクリと体が強張る。

 黙って勝手に子どもを産むのは、なにか罪になるのだろうか。なにより、大雅は私の身勝手さをどう感じているのか。
 瞬時にいろいろな不安が駆け巡り、血の気が引いていく。

「千香、頼むから正直に話してくれないか? でないと……もし千香の子の父親が、俺以外の男だなんて聞かされたら耐えられそうにない」

 ぐっと唇を引き結んで苦しげな顔をした大雅を、凝視した。
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