秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 混乱のあまり、自分に都合のいいように聞こえたのだろうか。
 陽太は大雅との子だと、私に認めてほしいと仄めかされているようだ。

「ごめん。いきなり来てそんなふうに言われても、警戒しちゃうよな」

 バツが悪そうな顔をする大雅に、頭ごなしに責められるわけではなさそうだと肩の力を抜いた。

「俺の話を聞いてほしい」

 真剣な表情で見つめてくる彼を拒否できるわけもなくて、「うん」と首を縦に振った。

「一緒に過ごしたあの日、目が覚めたらすでに千香はいなくて、なにか書き置きがないかって必死に探した。でもなにも見つけられなくて、どうして連絡先を交換しておかなかったんだって、死ぬほど後悔した」

「えっと……」

 それは申し訳なかったと言うべきか、困惑する。「責めてるわけじゃないんだ」と大雅は言うけれど、無言で去るのはずいぶん失礼な態度だったかもしれないと、今になって思い至る。

「たった一度会っただけの、しかも短時間のやりとりだって言うかもしれない。けど、あの日俺は、千香を好きになった」

「え?」

 突然の告白に、目を見張る。

「当時の俺は仕事で思い悩むことがあって、気晴らしにあのバーを訪れたんだ。そこで千香を見かけて……かわいい外見に惹かれたのは否定しない。でも、あのとき千香に声をかけたのは、なにかに悩む姿が自分と重なって放っておけなかったからだ」

〝かわいい〟の一言にドキリとする。でも、真剣な彼の様子にすぐに落ち着きを取り戻した。
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