秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「嬉しいよ、千香」

 叱られるとばかり思っていた。なんてことをしてくれたのかと、罵られても仕方がないと覚悟していた。
 それなのに大雅は、私の身勝手な行動を見るからに喜んでくれている。

「つまり俺たちは、あのときお互いに惹かれ合ってたんだね。千香には予定外の妊娠だったのに、迷わず産んでくれたなんて……」

 身を乗り出した大雅は、私の手を自身の手でそっと包み込んだ。

「千香、ありがとう」

 まさか礼を言われるなんてこれまで想像もしておらず、驚きすぎて目を瞬く。

「実は、陽太君を見て一目で俺の子じゃないかって確信してたんだよ」

「どうして?」

「俺と少し年の離れた弟の幼い頃の容姿は、周囲がそろって認めるぐらいそっくりだったんだ。成長に伴って、それなりに違ってきたんだけどね。この部屋に入って初めて陽太君を目にしたとき、幼い頃の弟と被って見えたんだよ」

 私と姉のように一卵性の双子ならともかく、見た目の相似程度では血縁関係を示す根拠に乏しいものだ。

 けれど、これまで大雅に似ていると誰とも共有できなかった私にとって、彼の言葉は、これ以上ないほど嬉しくて心が満たされていく。
 喜びに浮かんだ涙がこぼれてしまわないよう、目元にぐっと力を込めた。
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