秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「千香、これからなんだけど」

 触れていた手を放し、背筋を伸ばして改まる大雅に、こちらも居住まいを正す。

「俺と、結婚してくれないか」

「結婚……」

思いもよらない言葉に動揺する。

「そう……って、千香は結婚していないよね?」

「う、うん」

「よかった」

 安堵した様子の大雅は、大きく息をはきだして背もたれに体を預けた。

「俺は千香を愛している。千香も少なからず俺を想ってくれていた」

 〝愛している〟なんて、今まで誰にも言われた経験がなくて、瞬時に頬が朱に染まる。

「それに、俺は陽太君の存在を受け入れているし、少しでも早く名実ともに父親になりたいと望んでいる」

「ちょ、ちょっと待って。大雅は、私の勝手な行動をなにも咎めないの?」

 怒っていないとわかっても、自分の知らないところで起きていた人生を左右しかねない大きな問題に、なにも感じないわけがない。

「まったく。逆に感謝しかない」

 満面の笑みを浮かべてそう言った彼が信じられず、思わず凝視してしまう。

「それに、俺の方が無責任だと責められる側だ。千香は礼を言う必要はないって言うかもしれないけど、やっぱりきちんと言わせてほしい。俺の子を産んで、ここまで育ててくれてありがとう。千香がなんと言おうと、俺はそのことに感謝しているんだ」

「感謝だなんて……。それに、責任って言うならお互いさまだし……」

 ふたりとも成人した大人だ。合意の上での行為なら、どちらか一方に責任を押し付けるのはおかしい。
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