秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 ここで再び自身の非を繰り返し詫びても、大雅はそれを否定してやっぱり礼を言うのだろう。
 彼のまっすぐな視線は、今の言葉に偽りがないと物語っているように見える。

 そうやってすぐに人を信じてしまうのは、私の危うい部分だと気づいてる。
 それでも、大雅だからこそ信じたいという気持ちの方が大きくて、彼の発言を言葉通りに受け止める。

 けれど……。

 結婚なんて大事となれば、簡単にうなずくわけにはいかない。
 彼のご両親が、私たちの出会いや密かに子どもを産んでいた事実を受け入れてくれるとは思えないし、それ以前に私は家出をしてきたなんの後ろ盾もない身だ。むしろ、祝福されるとは考えづらい。

 それに……。
 そもそも私は、実家の問題からも逃げているばかりでなにひとつ解決していない。こちらがいくら縁を切ったつもりでいても、父はそう感じていない節がある。この先、もしかしたら彼のご実家にうちが迷惑をかける可能性も否定できない。

 実家の人間とはもう二度と関わりたくないし、わずかでも関わる隙を作りたくない。

 まとまりもなくらつらと考えているうちに、ひとつの疑問が浮かぶ。

 そもそも、大雅はどうして私の居場所を掴めたのだろうか。
 それに、子どもがいることにそれほど驚いた様子がなかったのも引っかかる。いくら避妊をおこたったと気づいたとしても、あの夜だけで妊娠したとはすぐに信じられないのではないか。
< 59 / 168 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop