秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「ひとつ、教えてほしいの」

 彼には私の父が広島の人間で、議員をしていると明かしている。私の苗字を知っているのだから、そこから父をたどるのは容易だろう。そうだとしたら……。

「なに?」

「大雅はどうやってここがわかったの?」

 尋ねた途端、表情がわずかに歪むのを見逃さなかった。そこに彼が後ろめたく感じているなにかがあると確信する。

「ごめん。アメリカにいては手の尽くしようがなくて……。最終的には探偵を使って、住んでいる場所は掴んでいた。それから、子どもがいることも。知らないうちにこそこそ嗅ぎまわられるなんて、いい気がしないよね。居場所と現状を知れればと、必要最低限の調査にとどめたんだけど……」

 だから陽太の父親までは確信を得ていなかったのかと、納得する。

 探偵を雇ったのは、この際なにも言うまい。
 それよりも、さっきの表情を見る限りまだ話すことがあるのではないかとじっと彼を見据える。

「……千香がもっとも嫌がるってわかってたんだけど……」

 私の視線に、大雅もいろいろと悟ったのだろう。ようやく重い口を開いてくれた。
 ものすごく言いづらそうな口ぶりの大雅だが、ごまかされはしないと辛抱強く続きを待つ。

「どうしても、君の育った環境を自分の目で見ておきたかった」

 少なからず動揺しているのか、それとも後悔しているのか。彼にしては珍しく物言いが曖昧だ。

 それでも、やはりそうかと察してこちらから切り出す。

「父に、会いに行ったのね?」

 わずかな躊躇を見せた後、大雅は心底申し訳なさそうにうなずいた。
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