秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「広島県議のうち、佐々木姓は佐々木孝氏ひとりだった。彼を訪ねて、約半年前に千香から出産したと連絡があった事実を聞き出した。子どもはもう一歳になるとも。それから、家を出て以来、千香は一度も実家に帰ってきていないとも聞いた。」
痛いほど手をぎゅっと握りしめて、目を閉じた。
両者が一言も発しなくなった中、幼子の「ママ」と呼ぶ声が沈黙を破る。
その愛らしさに、強張っていた表情がわずかに緩む。そっと瞼を開けると、陽太がゆっくりとこちらへ近付いてくるのが見えた。
「陽太」
それをこちらから迎えて、抱き上げてやる。
とくになにかをしてほしかったわけでもないようで、膝に乗せて椅子に座り直すと、陽太は私の服のボタンで遊びだした。
微妙な空気になった間をつなぐのに、息子の存在はありがたい。目の前にある柔らかな髪をなでながら、どう話すべきか思案する。
「黙って去ってしまって、ごめんなさい。それから、勝手にこの子を産んでしまってごめんなさい。産んだことに後悔はいっさいしていないけど、それでもあなたに知らせようとしなかったのはいけなかった」
繰り返しになってしまうが、心を落ち着けるためにもこれだけは言っておく。
「それは……」
「ううん。そこはけじめとして、もう一度きちんとしておきたい」
大雅の声を遮って、ずっと抱えてきた罪悪感を吐き出すように改めて言葉にする。
痛いほど手をぎゅっと握りしめて、目を閉じた。
両者が一言も発しなくなった中、幼子の「ママ」と呼ぶ声が沈黙を破る。
その愛らしさに、強張っていた表情がわずかに緩む。そっと瞼を開けると、陽太がゆっくりとこちらへ近付いてくるのが見えた。
「陽太」
それをこちらから迎えて、抱き上げてやる。
とくになにかをしてほしかったわけでもないようで、膝に乗せて椅子に座り直すと、陽太は私の服のボタンで遊びだした。
微妙な空気になった間をつなぐのに、息子の存在はありがたい。目の前にある柔らかな髪をなでながら、どう話すべきか思案する。
「黙って去ってしまって、ごめんなさい。それから、勝手にこの子を産んでしまってごめんなさい。産んだことに後悔はいっさいしていないけど、それでもあなたに知らせようとしなかったのはいけなかった」
繰り返しになってしまうが、心を落ち着けるためにもこれだけは言っておく。
「それは……」
「ううん。そこはけじめとして、もう一度きちんとしておきたい」
大雅の声を遮って、ずっと抱えてきた罪悪感を吐き出すように改めて言葉にする。