秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「私は、実家と縁を切った人間です。彼らとは、もう一生関わるつもりはありません」

 誓いを立てるかのようにきっぱりと述べる。

「半年前、最後に連絡をしたとき、父は戻ってくるようにとまだ言っていたわ」

「たしかに……知り合いだと言って尋ねた俺にも、千香が戻ってきたらと今後の話をしていた」

 人のことは言えないが、私が実家に帰っていないことといい、赤の他人になんでもかんでも明かしているとはさすがに呆れてしまう。
 父の立場を考えたら何事もやりすぎなぐらい慎重になるべきなのに、危機感がない。祖母という支えの存在がどれほど大きかったのかと改めて実感すると同時に、やはり母や姉はいっさい父のサポートができていないのだろうと察する。

「子どもが生まれたと伝えたら、相手も一緒に連れてきなさいと言われたわ。大雅が弁護士だって知れば、地盤を引き継げと言い出しかねない。そうでないとしても、あなたに理不尽な言いがかりをするかもしれない。迷惑をかける未来しか見えないの。どちらにしろ、あの人たちとかかわりができてしまうのが嫌」

 感情が高ぶって、声が震えてしまう。
 興奮のあまり、言っていることは支離滅裂になっている。

 ひと呼吸して心を落ち着かせた。

「結婚すれば、戸籍からこの場所も夫が誰であるのかその存在が知られてしまう。そんな隙を作りたくない」

 実家には報告しないまま、こっそり結婚するのも可能だろう。けれど、いつ知られてしまうのかと常に気にして暮らすのは耐えられないし、そんな相手と結婚するなんて大雅にも彼のご両親にあまりにも申し訳ない。
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