秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「千香が俺を完全に信じきれないのは理解できる。俺だって、君のすべてを知っているわけじゃない。でも、離れていてもどれだけ時間が経っても、どうしたって千香のことが頭を離れないんだ。当然、ほかの女性なんかに目も向かなかったし、向けようとする気すら起きなかった」

〝ほかの女性〟と言われてズキリと胸が痛む。
 会わなかった数年の間に、彼がほかの誰かと付き合っていたとしても、私はそれを責められる立場にない。むしろこうして私が彼を受け入れない以上、これからだって大雅がどこで誰となにをしようと束縛する権利なんてない。

 思わず悲痛な表情を見せてしまった私に、大雅が優しい笑みを向けてくる。

「千香」

 記憶の中の声にも十分動揺させられてきたが、こうして現実に耳にすれば、平常心を保つのも難しくなりそうだ。

 大雅が好き。
 この気持ちだけは疑いようがないと、確信できてしまう。

「俺は千香と会って以来、誰とも付き合っていないし心惹かれてもいない。まして、その場限りの関係もない。というか、初対面であんなふうに誘ったのは、後にも先にも千香だけだ」

「本当に?」

「ああ。その……千香は?」

 堂々と言い切ったかと思えば、自信なさそうに眉を下げる大雅に、あの夜かわいく思った一面もそのままだと気づく。
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