秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「私も、大雅だけだった」
 
 すぐに妊娠が発覚したのもあるけれど、新生活がスタートしたばかりで異性との付き合いなんて考えもしなかった。
 それに、目に入れても痛くない陽太がそばにいれば、それで十分幸せだった。

「よかった」

 安堵した大雅は、陽太からわずかに体を離して彼の顔を覗き込んだ。

「陽太」

 優しく名前を呼びながら互いの額を合わせて軽くこすりつけると、キャッキャと陽太の楽しげな笑い声が上がる。

 ひとしきりその触れ合いを楽しんだ後、腕の中の陽太を大切そうに抱きしめた大雅は、まっすぐに私を見据えた。

「この子が俺の子である以上、俺も権利を主張したい」

 言葉だけ聞けば陽太を取り上げるつもりなのかと警戒するところだが、大雅の表情はいたって柔らかい。
 いたずらめいた瞳は、まるであの夜『弁護士である俺がそう断言しよう』とお茶らけたときの再現のようだ。

 彼の腕の中で陽太も安心しきっているようで、ネクタイを引っ張り出そうと夢中になっていじりはじめた。
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