秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 そうこうしているうちに、窓の外は薄暗くなりつつある。
 寝場所の問題も解決したのなら、そろそろ夕飯を考えないといけない。

 さすがに大雅もいると、それなりの用意をするべきかと思案する。どう考えても、買い出しに行く必要がありそうだ。

「夕飯かな?」

 冷蔵庫を覗く私に、背後から大雅が声をかけてくる。

「そうなの。買い物に行かないと」

「そうか。それなら三人で行こう」

 近いとはいえ、陽太を連れていくのはそれなりに大仕事だ。人手があるのはすごく助かる。

 早速出かけようと、ベビーカーに陽太を乗せてふたり並んで歩き出した。

 馴れ親しんだこの道を歩くのは、いつも陽太とふたりか、時折加奈子さんが加わるぐらいだ。
 それが今日は、大雅が隣を歩いている。傍から見たら、三人家族に見えるだろうか。
 そんなふうに想像すると、くすぐったくなる。

「俺たち、ちゃんと家族に見えるかな」

 どうやら同じことを考えていたようだと、ぽつりとつぶやいた大雅の言葉に笑みが浮かぶ。

「たぶんね」
 
 若干よそよそしさはあるかもしれないが、きっとそう見えているはずだとうなずき返す。

「そっか」

 幸せそうに微笑む大雅に、「じゃあ、これも体験してみる?」とベビーカーを明け渡せば、「もちろん」と手を添えた。
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