秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「口元もだけど、鼻の形が千香に似てるね」

「加奈子さんにも言われた」

 我が子と似ていると言われるのは、やっぱり嬉しい。

「目の感じなんて、大雅そのものだよ」

 チラリと大雅を覗き見ると、彼はこれ以上ないほど幸せそうな顔していた。

「そっか……嬉しいな」

 嚙みしめるようなささやきに、胸がきゅっと締めつけられる。昨日は自身でも似ていると言っていたが、こうして他人から言われると喜びはさらに大きいのだろう。

 再び眠る陽太に視線落とし、その姿を存分に見つめた。

「そろそろ行こうか」
 
 大雅の声に、顔を上げる。同じタイミングで顔を上げた彼との距離が思いの外近くて、ドキリと胸が跳ねた。

 絡まった視線を逸らせないままでいると、「今だけごめん」と小声で言うや否や、そっと近づいた彼に軽く口づけられる。

 そのまま互いの額を合わせてくる大雅に、鼓動がどんどん速くなっていく。

「幸せすぎだよ」

 それはこちらも同じだ。
 
 でも、彼の求婚に返事ができていない私は言葉にしてはいけない気がする。
 こんなところで生真面目な性格が邪魔をするなんて、本当に融通の利かない人間だ。

 代わりに、もう一度唇を重ねてきた大雅に抵抗せずされるままになる。

 帰宅して加奈子さんの部屋を訪ねると、快く迎え入れてくれた。
 大雅の存在にずいぶん驚いていた彼女だったが、最後には満面の笑みで「よかったわね」と祝福してくれてほっとした。

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