秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「できたよ」

 声をかければ、大雅が陽太を抱き上げて連れて来てくれる。

「美味しそう! 陽太、いっぱい食べような」

 席に着いて真っ先に生姜焼きを口にした大雅を、じっと見つめる。果たして彼の口に合うだろうか。

「うん、すごく美味しいよ」

「よかった」

 食事の間中、大雅が何度も「美味しい」と褒めてくれる。最初は嬉しかったのに、あまりに褒められるとだんだん恥ずかしくなってくる。

「千香の手料理を毎日食べられたら、最高だな」

 未来を仄めかすような言葉にドキリとする。
 相手を喜ばせる言葉を、少しも気負うことなくするりと言えてしまう大雅が少しだけ羨ましい。自分も言葉で彼に返していきたいのに、どうしても羞恥心が邪魔をして素直になり切れないときもある。

 食事を終えると、いつものように大雅が陽太をお風呂に入れて、そのまま寝かしつけまでしてくれた。

「大雅、ちょっといいかな」

 ふたりだけの時間になって、ソファーに座るように促す。
 陽太が寝静まった後はこうして隣り合って座り、あれこれ話をするのが習慣になっている。
 緊張もほとんどしなくなったはずなのに、今だけは勝手が違う。

 言葉にするのが苦手だとか、言っている場合じゃない。覚悟を決めるようにぎゅっと手を握った。

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