秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 どれぐらい時間が経っただろうか。大雅が離れていくと同時に目を開き、上目遣いに彼を見る。

「千香。そのかわいさは反則だよ」

 意味がわからず、首を傾げた。

「そんなもの欲しそうな顔をされたら、我慢できなくなる」

 なにを言われているのか察して、頬が熱くなる。

「あー、さらに煽ってくる」

 ガシガシと自身の頭を掻きながらうめき声をあげた大雅は、私が視界に入らないようにうつむいてしまった。

「大雅?」

 嫌がられているわけではないとわかっていつつ、不安げな声になってしまう。
 それに反応してガバリと体を起こした大雅の耳元は、赤く染まっていた。そんなところもまたかわいく見えてしまうと言ったら、彼は怒るだろうか。

「千香。ここでは我慢する。明日にでも婚姻届を出して、そのまま俺の住んでいるマンションに越してきて。ちゃんと夫婦になったら、もう遠慮せずに迫るから」

 恥ずかしすぎる宣言に一層顔が赤くそめながら、聞き流せない言葉の数々に、素っ頓狂な声をあげる

「あ、明日!?」

 それはあまりにも早急な話だ。

「それを逃したら、次の俺の休みまで身動きが取れなくなるだろ。もう少しも離れたくないんだ。お願いだよ、千香。三人で一緒に暮らそう」

 必死で懇願してくる大雅に、心が揺れる。
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