秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「心配しないで、千香。俺にはカンカンに怒ってたけど、千香についてはちゃんと認めてくれてる。千香の仕事のことも教えたら、若いのに女手ひとつで子どもを育てて仕事も頑張っている、頼もしいお嬢さんだって感心してた。むしろ、愚息が申し訳ないって……俺が言うことじゃないけど」

 バツの悪そうな顔をする大雅を見つめる。
 彼のご両親にはずいぶんと評価されているようで、なだか居心地が悪くなる。
 ここ数年がむしゃらになっていただけだ。身なりをきちんと整えられない日だって珍しくなかったぐらいで、他人にはとても見せられたものじゃない。

 母親になったのだから子どもを育てるのは当然で、それだけで誰かに褒められるのはおかしい。

「なんとしてでも、孫とともにお嫁さんを連れて帰ってこいって厳命された。ああ、でも、親に言われたからここに来たんじゃないよ。千香に会う前に、けじめとして両親に話したんだ」

「えっと……なにも問題はないと?」

「その通り」

 そこまで言い切るのなら、この場はひとまず納得しておく。
 自信ありげに言い切った大雅は、「ちょっと待って」とおもむろに立ち上がった。そのまま彼が持ち込んだ荷物の中から一枚の用紙を取り出してくる。

「ほら」

 見せられたそれに目を落とす。

「婚姻届?」

 ざっと目を通すと、当たり前のように彼に関する部分はすべて埋められていた。保証人の欄にあるのは、おそらく大雅のお父さんの名前なのだろう。

「そう。ちゃんと認めてくれてるから、父さんもこうして書いてくれた」

 それにはほっとするが、私の返答次第で本当にどうなっていたのだろうかと心配になる。
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