あなたの落とした願いごと
と。


「おはよう王子!此処で会えて嬉しいよ!」


いきなり靴下のままの素足が踏まれ、隣からキンキン声が聞こえてきたのだ。


「いっ、!」


相手が履いていたのは厚底ローファーだったから、分厚いヒールの硬い部分が足の指の間に直撃した。


ヒールの面積が広かった分、痛みも大きくて。


思わず教科書を取り落とした私は、しゃがみながら痛む足をさすった。


「王子、今日は電車で来てないの?駅からの通学路に居なかった気がしたんだけど」


わざとらしくこんな嫌がらせをするのは、もちろん福田さんしか居ない。


何も言っていない側からこんなに質問の嵐を浴びせられて、さすがの彼も良い気はしないだろう。


それに、彼女とは社会科見学直前のあの事件から会話をしていないし、この仕打ちからして私は確実に嫌われている。



多分これは、私への見せしめなんだろうな。


痛む足に何とか上履きを履かせ、教科書を拾い上げながら、私は1人胸にごちる。


福田さんは、滝口君をわざと私から遠ざける為にこんな事をしているんだ。


以前までの私は滝口君を何とも思っていなかったし、嫌がらせにも多少の耐性はついているから何とも思わなかったかもしれない。


(でも、今は違う)


一方的に話し続ける福田さんの声を聞きつつ、私は短く息を吐く。
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