あなたの落とした願いごと
その声が意地らしく笑っている様に聞こえるのは、気のせいではないと思う。


「青は回避したけど、赤は免れられませんでしたー!夏休みの補習確定だわ!」


コンビニ弁当を食べていた彼は、箸を置いて大袈裟に嘆き始めた。


「まあ、中間で12だった奴が30に上がっただけでも、…凄いんじゃね?」


「笑うなよ馬鹿!数学93点の奴にだけは言われたくないね!」


数学が返却されたのは昨日だったから、既に全員が空良君の点数を知っていたものの、滝口君にしてみれば未だに面白いらしい。


肩を震わせて笑う滝口君の姿は貴重で、それを隣で見られる事に少しの優越感を覚えた。



その後、私達が試験の話で盛り上がっていると。


「滝口ー、廊下で福田が呼んでたよ」


何処から現れたのか、クラスメイトの田中君が滝口君の肩を叩いた。


現在、前列で教卓に1番近い位置に座っている彼は、先生に指名される事も多いから自然と名前を覚えてしまった。
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