あなたの落とした願いごと
「財産とか家柄とかの面でも、神葉の虜になる女は沢山居るんじゃない?」


「ひえーっ…。福田さんはまさしくその分類に入るね」


「告る理由も“一目惚れ”だしね。内面を考慮しないわけだから、そりゃあ神葉も良い顔しないよな」


エナ達の会話の内容がいつにも増して真面目だから、私も聞き入ってしまう。


顔を重視する一目惚れと、人の内面を重視するのでは、どちらが良いんだろう、とぼんやり考えた。


「まあ、俺達も一目惚れだったし、人の事はとやかく言えないんだけどね!」


「それもそうか!」


私がそんな風な考えを抱いているとは露知らず、前の席に座るカップルは顔を見合わせて笑い合っている。



私も彼らみたいな関係性を滝口君と築けたら、どんなに素敵だろう。


顔のない2人をじっと見つめながら、私は残ったご飯を口に詰め込んだ。


味は、よく分からなかった。



「ご馳走様でした」


お昼休みも残り僅かとなり、私は空になったお弁当箱を風呂敷に包んでいた。


滝口君は未だに帰ってきていなくて、廊下で何が起こっているのか見当もつかない。


でも、2人のプライベートな場面に足を踏み入れるのも良くないから、立場をわきまえている私は自席から動こうとはしなかった。



「えっ、良いじゃん!その頃には空良の補習も終わってるもんね」


「そうそう、ナイスアイデアでしょ?」
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