あなたの落とした願いごと
滝口君の最後の一言は囁くように小さくて、でも私の耳は誤魔化せない。
私は、瞬間的に頬が熱を帯びるのを感じた。
滝口君、今自分が何を言っているかきちんと自覚してる?
そんな、これは私達だけの秘密です、みたいな事を言って、私がどんな気持ちになるか分かってる?
嬉しくて、切なくて、この叶わない恋を続けている自分に苦しくなるんだよ。
…ああ、悔しいな。
素直に喜びたいのにどうしてもいたたまれなくて、唇を噛んだ。
その時。
『滝口神社花火大会は、あと15分で開催致します。ご来場の皆様は、花火大会開始時刻までに閲覧席にお越しください』
神社に簡易的に設置されたスピーカーから、花火大会がもうすぐ始まる事を告げるアナウンスが流れたんだ。
「滝口君、あと15分だって!」
それまでに滝口君が言う場所に辿り着かないと、と、私は前を行く想い人に向かって話し掛けた。
「大丈夫だ、余裕で間に合う」
私の声に含まれる心配の色を読み取ったのか、滝口君は一瞬だけこちらを向いた。
その瞬間。
「花火だってよ!」
「早く行こうぜ!」
興奮気味の子供達が私と滝口君の間を走り去り、
私達の繋いでいた手が、離れた。
「滝口君!」
お面をつけてこちらを向いたままの滝口君と私の目が、確実にかち合った。
私は、瞬間的に頬が熱を帯びるのを感じた。
滝口君、今自分が何を言っているかきちんと自覚してる?
そんな、これは私達だけの秘密です、みたいな事を言って、私がどんな気持ちになるか分かってる?
嬉しくて、切なくて、この叶わない恋を続けている自分に苦しくなるんだよ。
…ああ、悔しいな。
素直に喜びたいのにどうしてもいたたまれなくて、唇を噛んだ。
その時。
『滝口神社花火大会は、あと15分で開催致します。ご来場の皆様は、花火大会開始時刻までに閲覧席にお越しください』
神社に簡易的に設置されたスピーカーから、花火大会がもうすぐ始まる事を告げるアナウンスが流れたんだ。
「滝口君、あと15分だって!」
それまでに滝口君が言う場所に辿り着かないと、と、私は前を行く想い人に向かって話し掛けた。
「大丈夫だ、余裕で間に合う」
私の声に含まれる心配の色を読み取ったのか、滝口君は一瞬だけこちらを向いた。
その瞬間。
「花火だってよ!」
「早く行こうぜ!」
興奮気味の子供達が私と滝口君の間を走り去り、
私達の繋いでいた手が、離れた。
「滝口君!」
お面をつけてこちらを向いたままの滝口君と私の目が、確実にかち合った。