あなたの落とした願いごと
対する私達の部活は大会がない為、4人全員が無事に準備に参加出来ているんだ。


恋のキューピットを自称するエナは空良君を独り占めしているから、自然と私と話す相手は滝口君になる。


何も気にせずに幸せを感じられるこの時間は、私の中での日々の楽しみになっていた。


でもお互い夏祭りの事は話さないし、その事は半分禁句のようになっていて。


それでも、大好きな滝口君の声が笑っている限り、私は、無理やりあの日の事を聞き出そうとは思っていなかった。



「あぁお腹空いた…。眠いし疲れたし、とにかく夕飯…」


1時間近く電車に揺られていた私は、疲れがどっと押し寄せた状態で家の玄関を開けた。


とにかく、早く夕飯を食べて寝て明日に備えよう、何て考えながら。



「あれ、?」


ドアを開けて最初に目に入って来たのは、玄関先に置かれた2つの靴だった。


両親はまだ仕事のはずだから、今家に居るのは兄だけのはず。


置かれた靴のうちの1つは兄のものだけれど、もう1つは黄色のビーチサンダルで、それが女物か男物かも区別出来ない。


(これ、誰のだろう…?)


見覚えのないそれに首を捻りつつ、私はただいま、と声を張り上げた。
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