あなたの落とした願いごと
けれど。
「…え?」
こてん、と首を傾げたその人は、次の瞬間不思議そうに質問をしてきた。
「沙羅ちゃん、何でそんなに堅苦しいの?俺何かしたっけ?」
(あっ)
今度は、私が固まる番だった。
リュックを背負ったままの背中からは冷や汗が流れ落ち、男の人の肌色の丸を見つめる目に力が篭る。
この人は本当に私と面識があって、なのに私は今、彼の事を忘れてしまっていたんだ…!
どうしようどうしよう、やらかした。
頭の中ではこんなにも焦っているのに、肝心の顔が見えない。
この人が誰だか、分からない。
何も言えないまま、焦りと緊張が上限に達しようとしたその時。
「拓海ー、ラーメン出来たから来いよー」
兄がタイミング良く、男の人…拓海君の名を呼んだんだ。
「はーい」
掠れた声で返事をして踵を返し、リビングに向かっていくその人の後ろ姿は、
まさしく、私が見ていた拓海君の背中そのものだった。
「た、拓海君!」
声も姿も何もかもが違うけれど、この人は拓海君だ。
後悔の念に襲われた私は、慌ててその背中を追い掛けた。
彼を追うようにリビングに入れば、たった今出来上がったインスタントラーメンをお椀によそっている兄と拓海君が、同時にこちらを見てきた。
「…え?」
こてん、と首を傾げたその人は、次の瞬間不思議そうに質問をしてきた。
「沙羅ちゃん、何でそんなに堅苦しいの?俺何かしたっけ?」
(あっ)
今度は、私が固まる番だった。
リュックを背負ったままの背中からは冷や汗が流れ落ち、男の人の肌色の丸を見つめる目に力が篭る。
この人は本当に私と面識があって、なのに私は今、彼の事を忘れてしまっていたんだ…!
どうしようどうしよう、やらかした。
頭の中ではこんなにも焦っているのに、肝心の顔が見えない。
この人が誰だか、分からない。
何も言えないまま、焦りと緊張が上限に達しようとしたその時。
「拓海ー、ラーメン出来たから来いよー」
兄がタイミング良く、男の人…拓海君の名を呼んだんだ。
「はーい」
掠れた声で返事をして踵を返し、リビングに向かっていくその人の後ろ姿は、
まさしく、私が見ていた拓海君の背中そのものだった。
「た、拓海君!」
声も姿も何もかもが違うけれど、この人は拓海君だ。
後悔の念に襲われた私は、慌ててその背中を追い掛けた。
彼を追うようにリビングに入れば、たった今出来上がったインスタントラーメンをお椀によそっている兄と拓海君が、同時にこちらを見てきた。