あなたの落とした願いごと
「もうやだっ、…!」


零れ落ちる涙を拭うこともせず、ひたすらに走って階段を駆け下りる。


行き先は、1つしかなかった。






「はあっ、はあっ、…」


リュックも財布も教室に置いたまま、私は脇目も振らずに全速力で滝口神社へと走っていた。

道行く人がこちらを振り返っているのが気配で伝わる。


でも、彼らが心配の目で見ているのか冷めた目で見ているのか分からないから、彼らの行動は私の心に恐怖と劣等感を植え付けた。


今日ほど、この忌まわしい病気を恨んだ事はあっただろうか。


酷いよ、神様。


躓きながらも神社に着いた私は、走る速度を緩めずにあの大きな鳥居を通り抜けた。


先程よりも参拝に来ている人数が増えている気がするけれど、どうせ私は誰の顔も分からないんだ。


半分投げやりになった私は、一直線に本殿へと向かった。



「っ、うっ、…」


本殿には、お参りをする為に何人かが並んでいたけれど、私には既に彼らの事なんて視界に映っていなかった。


ふらつきながら木で出来た階段を駆け上がり、でも、

足がもつれて、その場に座り込んだ。


「っ、…」


(神様、神様っ…!)


心の中で、ありったけの声量で神様の名を叫んだ。


どうして、貴方は私の願いを叶えてくれないんですか?


不可能かもしれなかったけれど、私に残された手段はこれしかなかったの。
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