あなたの落とした願いごと
滝口君が目を見開いたのが、はっきりと伝わった。


絶望感に打ちひしがれながら、私は震える口を開く。


「それ、私だよ。私、お兄ちゃんとフランクフルト食べて、美味しいねって言い合った直後に迷子になったから」


バラバラだったパズルのピースが、かちりとはまった音がした。


私は滝口君に助けられて、

でもそのせいで、彼は将来の道を閉ざされたんだ。


「私、あの日助けてくれた男の子に、ずっと感謝の気持ちを伝えたかったの」


あの日の男の子は、私が恋に落ちた相手。


感謝と謝罪の気持ちが入り交じり、新たな雨が地面に落ちる。


「遅れちゃったけど、…助けてくれてありがとう。それと、ごめんなさいっ…!」



滝口君がこうなってしまったのは、十中八九私に責任がある。


私は、何て申し訳ない事をしてしまったんだろう。


8年前に滝口君に多大なる迷惑を掛けた上に、今朝も信じられない過ちを犯してしまった。


滝口君の夢を奪ったのは私なんだから、そりゃあ私の願いが神様に届かないわけだ。


だって、私達の願いはその重さと重要度に天と地の差があるのだから。


もう、謝っても謝りきれない。


滝口君に負けず劣らずな勢いで号泣する私の耳に、彼がふふっと息を漏らしたのが聞こえた。


「…お前、8年前から変わらず馬鹿なんだな」


滝口君の声は、春の日差しのように柔らかい。
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