あなたの落とした願いごと
「俺の願いは叶うから、猿田彦大神は絶対に聞き入れてくれるから、…だから、お前の願いも叶うよ」


「っ、…」


滝口君は、どこまで優しい人なんだろう。


怒るどころか笑って受け入れてくれて、挙句の果てには治療不可能だと言われている私の病気に対して、ポジティブな言葉を投げ掛けてくれるなんて。


「でも、…私の事、おかしいって思うでしょ?人の顔見れないなんて、気持ち悪」


「お前さ、マジで物事悲観し過ぎじゃない?その考え自体持つの止めな」


想い人の紡ぐそれはいつかのエナの台詞と似ていて、何重にも響いて私の心にこだまする。


「お前は馬鹿だけど、病気だからおかしい、なんて思わねぇよ」


「…」


駄目だ、滝口君への愛が溢れて止まらない。


でも、彼は今とても心に刺さる台詞を言ってくれたのに、未だに私を貶す要素が入っている気がしなくもなくて。


「私、やっぱり馬鹿なの?」


「当たり前じゃん、今更何言ってんの」


泣き笑いで尋ねると、完全にからかわれた。



「…だから、4月に俺の顔見ても何も言わなかったのか」


その後、滝口君は腑に落ちた様に何度も頷いた。


「名前は知ってたけど、今まで見た事無かったから…」


「なるほど。で、俺が金髪だったらまた見分けつくんだよな」


「うん」


何処か考える素振りを見せた彼は、すぐに小さく頷いた。
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