あなたの落とした願いごと
「じゃあ俺、また金髪に戻すわ」


(いや、えっ?)


何だ、その、まるで“王子様役よりも私の方が大切です”みたいな言い方は。


少し思考回路を変えれば、新手の告白の言葉のようにも聞こえてしまうよ。


「ちょっと待って、それは、」


「何?俺、またお前に忘れられたら嫌なんだけど」


あまりにも直球過ぎる言葉に、私はぐっと言葉を飲み込んだ。


「私もまた滝口君の事忘れるの、嫌だけど…。今の言い方は、…福田さんに逆恨みされそう」


「福田ぁ?あいつはどうでもいいわ」


すっかり泣き止んだ滝口君は、肌色一色の顔を分かりやすく歪めた。


「あいつ、夏祭りの日にいきなり現れて俺の手を掴んだんだよ。それのせいで俺らは離れ離れになって、俺は親父と遭遇したんだ」


「えっ?」


知られざる事実に、私は目を見開いた。


あの時、確かに彼は誰かに袖を引っ張られていたようだったけれど、まさかあの場に福田さんが居たなんて。


「あいつマジで執念深いわ…。お前も気をつけろよ」


滝口君はこの期に及んでも私を心配してくれて、その格好良い台詞が私の脳を支配する。


「うん、」


甘い、甘過ぎるよ滝口君。

最初こそこの初恋とお別れしようと思ったけれど、やっぱり私にそんな事は出来そうにない。
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