あなたの落とした願いごと
数日前の滝口神社での出来事を思い出しながら、私は腕組みをして考え込んだ。
私が学校から逃げ出したあの日、私達が神社を後にしたのはお昼を少し過ぎた頃だった。
滝口君曰く、彼は8年前のあの日以降父親とまともに口すら利いていないようで。
だから、彼が私の手を引いて神社を出ようとした時も、彼はずっと不安げに辺りを窺っていた。
その姿は、普段誰の目も気にせずに堂々と振る舞う彼からは想像もつかないもので。
『やべ、隠れろ』
宮司さんらしき人にいち早く気が付いた滝口君が私の頭を押さえてその場に屈んだ時なんて、彼は極度の緊張と闘っているのか、しきりに胸の辺りを親指でぐりぐりと押さえていた。
だから、滝口君が学校に向かう途中に、
『俺、親父とちゃんと話してみる』
なんて宣言した時は、驚き過ぎて顎が外れるかと思った。
でも、滝口君の願いを実現させるのに1番手っ取り早い方法はそれだったから、私は彼の判断を応援する事しか出来なくて。
そして、その翌日から文化祭前日までの朝、私達は神社で偶然にも鉢合わせし続けていたんだ。
私は、滝口君がこんな事になってしまった責任は自分にもあると感じていたから、願いごとの内容を“滝口君の願いが叶いますように”へと変えた。
今重要なのは私の願いではなく、あくまでも滝口君の心からの願いが叶う事。
私が学校から逃げ出したあの日、私達が神社を後にしたのはお昼を少し過ぎた頃だった。
滝口君曰く、彼は8年前のあの日以降父親とまともに口すら利いていないようで。
だから、彼が私の手を引いて神社を出ようとした時も、彼はずっと不安げに辺りを窺っていた。
その姿は、普段誰の目も気にせずに堂々と振る舞う彼からは想像もつかないもので。
『やべ、隠れろ』
宮司さんらしき人にいち早く気が付いた滝口君が私の頭を押さえてその場に屈んだ時なんて、彼は極度の緊張と闘っているのか、しきりに胸の辺りを親指でぐりぐりと押さえていた。
だから、滝口君が学校に向かう途中に、
『俺、親父とちゃんと話してみる』
なんて宣言した時は、驚き過ぎて顎が外れるかと思った。
でも、滝口君の願いを実現させるのに1番手っ取り早い方法はそれだったから、私は彼の判断を応援する事しか出来なくて。
そして、その翌日から文化祭前日までの朝、私達は神社で偶然にも鉢合わせし続けていたんだ。
私は、滝口君がこんな事になってしまった責任は自分にもあると感じていたから、願いごとの内容を“滝口君の願いが叶いますように”へと変えた。
今重要なのは私の願いではなく、あくまでも滝口君の心からの願いが叶う事。