あなたの落とした願いごと
「私は、王子に振り向いて欲しくて頑張ってるの。何回も告白してるの、あんたも知ってるよね?」


それは、もちろん私も知っている。

告白して振られてもめげずに立ち上がる彼女は、私の何倍も勇気がある。


「なのに、何で王子はあんたの方ばっかり行くの?あんたが王子と釣り合わない事くらい、自分でも自覚してるでしょう!?」


滝口君が私の方に行く…?

それは多分、私が人混みを恐れているのを彼は知っているから、手助けをしようとしているだけだと思う。


滝口君はよく私に思わせ振りな態度を取るけれど、あれは全て冗談の類に入っているし。


そう弁解しようと思ったけれど、


「釣り合わない…?」


それ以上に気になる台詞があって、私は震える口を無理やりこじ開けた。


「当たり前じゃん」


福田さんは、その華奢な身体と可愛らしい雰囲気からは考えられない程に低い声を出した。


ただただ、彼女の気迫に気圧される。


「王子のあの格好良い顔とスタイルに、あんたじゃ到底釣り合わないって言ってんの。分かる?」


(っ、…)


私は下唇を嫌という程噛み締め、福田さんの目の辺りをじっと見つめる。


ここで滝口君の“顔”の話が出るなんて思ってもみなかった。


だって私は、人の顔の話に関しては何も言い返せないから。
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